アグニア・ガルダノヴァ監督 & イゴール・ミャコチンPD独占インタビューが到着!

本作の監督を務めるアグニア・ガルダノヴァと、イゴール・ミャコチンプロデューサーからのインタビューが到着。アグニアはロシア出身、フランス在住で、複雑な人間関係に焦点を当て、じっくりと観察するような語り口が特徴。「女性らしくない」外見ゆえに屈辱と暴力に耐えた青年期を経て、セクシュアリティとジェンダー・アイデンティティというテーマを深く掘り下げていくことに決め、実際に制作されたのが『クイーンダム/誕生』である。イゴールは、エミー賞ノミネート、BAFTA賞受賞の映画製作者。長編ドキュメンタリー『チェチェンへようこそ ―ゲイの粛清―』の共同プロデューサーを務め、サンダンス映画祭をはじめ世界各国で高い評価を得る。DOC NYCによる「40歳未満の40人」にも選出されている。

■ 運命を変えた出会いと、家族としての絆
当初、このプロジェクトは各地のドラァグクイーンを主人公にしたドキュメンタリーシリーズとして計画されていた。しかし、知人から紹介されたジェナ・マービンと出会った瞬間、監督のアグニアはそのコンセプトを一変させた。「ジェナは恐れを知らない芸術家であり活動家という、類まれな存在です。自らの真実だけを武器に危険へと踏み込む。クィアであることが罰せられ、自己表現が犯罪扱いされる国において、ジェナの存在そのものが反抗の行為であり、美の行為となるのです」と、アグニア監督はジェナへの深い敬意を表す。Instagramなどで見せる親密な様子については、「誇りを持って言えるのは、私たちは単なる親友ではなく、ジェナは間違いなく私の家族だということです。共に経験した数々の冒険や困難を通して、強い絆と相互の信頼を築いてきました」と、本作を通して結ばれた固い絆を語った。

■ 「確信」さえ許さない、生々しくリスクの高い制作過程
プロデューサーのイゴール氏がこのチームに加わった背景には、一つの個人的な衝撃があった。本作のエグゼクティブプロデューサーの一人であり、『チェチェンへようこそ』で共に仕事をしたデヴィッド・フランスから紹介された10分間のサンプル映像を見た際、彼はそこに自身の故郷を見出したのだ。「私はロシア極東のマガダンで生まれ育ちましたが、ジェナもまた同郷でした。この物語に故郷が映し出される光景は、現実離れした感覚と同時に深い個人的な衝撃をもたらしました。その瞬間、私はこの映画を世界に届けねばと決意したのです」。
本作の成功を確信した瞬間はあったか、という問いにイゴール氏はこう明かす。「『成功への確信』という言葉は適切ではないかもしれません。私たちが作り上げていたものは、それほどの確信を許さないほど生々しく、同時にあまりにもリスクの高い作品でした。しかし、このプロジェクトに出会った瞬間、アグニアのビジョンと演出、そしてジェナの強さと脆さが作り出す魅惑的な芸術性に、唯一無二の存在を目の当たりにしているのだと確信したのです」。

■ ウクライナ侵攻 ー「表現者」から「活動家」へ-
監督は、本作撮影中に進化を続けたジェナについてこう語る。
「撮影開始時、ジェナはまだ21歳でしたが、この数年で目を見張るような素晴らしいアーティストへと進化を遂げました。当初は公共の場でのパフォーマンスから始まりましたが、次第にソーシャルメディアを通じて、自身のアートには「社会をポジティブに変える力」があるのだと自覚していったのです。ジェナが政治的な立場を明確にする大きな転換点となったのは、反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイの自由を求める抗議活動に参加した瞬間でした。それは、ジェナが「表現者」から「活動家」へと成長する、極めて重要な局面となりました。
そして2022年2月24日、ロシアによるウクライナへの全面侵攻が始まりました。ジェナは沈黙を貫くことができず、この戦争に抗うため、ロシア政府が引き起こした凄惨な現実に人々の目を向けさせるべく、自らの身体を張ったパフォーマンスを行う決意を固めます。有刺鉄線で裸の体を包み、凍てつくような寒さのモスクワを、たったひとりで行進する。その抗議パフォーマンスの結果、ジェナは逮捕されました。そこからは、拘束からの解放、そしてロシアからの決死の脱出と、次々に予想だにしない事態が起こりました。ジェナ自身も含め、誰もが予測し得なかった展開です。
唯一の故郷を離れる選択、愛する友人たちとの別れ、そして、もう二度と会えないかもしれない祖父母への想い。自らの決断が正しいのかさえ確信を持てないまま、ジェナは極めて短い時間で、あまりにも重い決断を下さなければなりませんでした。最終的にこの映画は、ジェナの人生を通じて『前と後』『古いものと新しいもの』『愛と喪失』というテーマを象徴する、かけがえのない物語となりました。」

■ 「沈黙を破る」芸術と、パリでの新たな飛躍
イゴール氏は、現実逃避ではなく「現実を直視する手段」としての映画に惹かれるという。「これは単にクィアの生活を描いた作品ではなく、可視化に伴う代償や、敵意に満ちた環境で公然と生きるために必要な勇気についての作品です。私は恐怖と沈黙が人を形作る様を長い間見てきました。真の芸術性でその沈黙を破る映画に出会った時、私はその作品を世に送り出す手助けをしたいと思うのです」。
また、現在26歳になったジェナについても「パリでさらに自身の力を開花させ、一度も歩みを止めず新しい自分を模索し続けている。彼女がこれから先、自らのアートをどこへ連れて行くのか、心から楽しみにしています」と、パリでの初個展やリック・オウエンスやミシェル・ラミー、フェカル・マターらアーティストとのコラボレーションに触れ、深い信頼と期待を寄せた。

■ 日本の観客へ:自分らしくあるための勇気
最後に、アグニア監督は日本の観客に向けて温かいエールを送った。「日本での劇場公開は制作当初は夢にも思わなかったことで、心から感謝しています。日本の皆様へ、私からのメッセージはこれです。自分らしくあれ――怖くなってもいい、それでも前に進み続けてください。周りの人々を尊重し、愛してください。なぜなら結局、最も大切なのは愛だからです。私は断言できます、『クイーンダム/誕生』は何よりもまず、愛についての映画だと」。
過酷な現実を直視し、自らの存在をアートで刻みつけたジェナ・マービン。ジェナが命を懸けて守ろうとした自由の記録は、今を生きる私たちの心に強く、優しく問いかける。

映画『クイーンダム/誕生』はいよいよ明日1/30(金)全国公開。
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